MRR(月次経常収益)の基礎知識|算出方法やARR、NRRとの違いは?

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MRR(月次経常収益)は、サブスクリプション型ビジネスにおいて、LTVと並ぶ重要なKPI(重要業績評価指標)です。ただし、その意味や目的を正しく理解していなければ効果的に活用することはできませんし、効果的に活用できなければ、当然事業の成長も期待できません。

この記事では基礎知識から、計算方法、実践的な活用法まで、ビジネスでMRRを使う上で最低限知っておきたいノウハウをわかりやすく解説します。

MRRとは?

まずは「MRRって何?」「どうして重要なの?」という方に向けて、MRRの概要を説明します。

●MRRの意味

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MRRとはMonthly Recurring Revenueの略称で、日本語では「月次経常収益」と訳されています。注意しておきたいのが、MRRの対象となる収益は「毎月継続して生じる収益」のみということ。たとえば定額制のサブスクリプションサービスの場合、毎月発生する月額料金は対象となりますが、初期費用やトライアル期間の割安料金、オプション料金などのように、単発的に発生する収益は対象外です。

●MRRがサブスクリプション型ビジネスで重視される理由

MRRがサブスクリプション型ビジネスで重視される大きな理由は次の2点です。

〈1〉ビジネスの安定性や成長性を知る指標となる
〈2〉現状課題を把握できる(戦略や改善策を考えるためのデータになる)

一般的な小売業のような売り切り型のビジネスモデルとは違い、サブスクリプション型ビジネスは顧客の継続利用によって発生する経常収益を積み重ねていくことで成長します。つまり、収益全体におけるMRRの比率が高ければ高いほど、事業の安定性・成長性も高いということです。MRRの推移を分析することで事業の中長期な予測を立てることもできます。

こうした特徴から、MRRは株主や投資家がスタートアップ企業などへ投資する際の指標としても注視されています。

たとえば経済ニュースメディア『NewsPicks』などを運営する株式会社ユーザベースは、図1のように2021年第1四半期決算資料で個別事業(SPEEDA)のMRR推移を発表しています。

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図1:株式会社ユーザベースの2021年第1四半期決算資料より引用

また、MRRの数字を定期的に検証・分析することで、事業成長を妨げる要因や課題を洗い出し、新たな戦略や改善策を打ち出すことができます。その方法については、後ほどあらためて詳しく説明します。

●ARR、NRRとの違い

MRRと混同しやすい用語について説明します。

・ARR

ARRは「Annual Recurring Revenue」の略称で、「年次経常収益」と訳されます。MRRとの違いは、MRRが〈月間〉の経常収益を表すのに対し、ARRは〈1年間〉の経常収益を意味するところ。おもにB to Bの年間契約のサービスで使われています。

・NRR

NRRは「Net Revenue Retention」の略称で、「売上維持率」と訳されます。MRRとの違いは、MRRは対象月の経常〈収益〉であるのに対し、NRRは対象月の収益の〈維持率〉を指すところ。つまり、顧客がその商品・サービスに払う金額の増減割合(%)を示す指標ということです。

MRRの種類と計算方法

続いてMRRの検証・分析に必要な、MRRの種類と算出方法について説明します。

●MRRの種類

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MRRは図2のように、「New MRR」「Expansion MRR」「Downgrade MRR」「Churn MRR」の4種類に分類されます。
※「Reactivation MRR」を加えるケースもありますが、ここでは説明を簡略にするため省略します。

それぞれのMRRについて説明します。

・「New MRR」

新規顧客によってもたらされるMRRをNew MRR(新規MRR)といいます。たとえば、100人の新規顧客が100,000円/月のプランに加入した際のNew MRRは10,000,000円です。特にサービスを開始して間もない時期に注視すべき指標です。

・「Expansion MRR」

下位プランから上位プランへのアップグレードなどによって、前月より課金額が増えた既存顧客から計上されるMRRを指します。日本語で「拡大MRR」と呼ぶこともあります。たとえば、ユーザーAが10,000円/月プランから50,000/月プランに変更し、ユーザーBが50,000円/月プランから100,000円/月プランに変更した月のExpansion MRRは90,000円(ユーザーA・40,000円+ユーザーB・50,000円)です。ある程度契約者が増えてくる段階で重要となるMRRです。

・「Downgrade MRR」

Expansion MRRとは反対に、上位プランから下位プランへダウングレードするなど、前月より課金額が減った既存顧客から得るMRRを指します。日本語で「減少MRR」と呼ぶこともあります。たとえば、ユーザーAが50,000円/月プランを10,000円/月プランに変更し、ユーザーBが100,000円/月プランを50,000円/月プランに変更した月のExpansion MRRは90,000円(ユーザーA・40,000円+ユーザーB・50,000円)です。

・「Churn MRR」

Churn(チャーン)を直訳すると解約・退会。つまり、当月にサービスを解約した顧客から得たMRRを指します。日本語で「解約MRR」と呼ぶこともあります。たとえば、5人の顧客が50,000円/月プランを解約した際のChurn MRRは250,000円になります。Downgrade MRRと 同様、少なければ少ないほどビジネスとして健全です。

●MRRの計算方法

MRRの算出には、おもに次の2種類の計算式が使われています。
〈1〉 4種類のMRRを利用した計算方法

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先月のMRRに、先述の4種類のMRRを加える計算式です。

〈2〉 月額利用料を使った計算方法

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月額利用料に顧客数を掛けてもMRRを算出することができます。たとえば、月額定額料金が10,000円で顧客が50人の場合は下記の通りです。

MRR:500,000円=10,000(円)×50(人)

※複数の料金プランがある場合は、各プランのMRRの合計額を算出します。
たとえば、下記2つの料金プランを持つサブスクリプションサービスがあるとします。
ベーシックプラン:5,000円/月    ユーザー数:5,000人
プレミアムプラン:10,000円/月   ユーザー数:2,000人

このサービスのMRRを求める際は、まずそれぞれのプランのMRRを求めます。
ベーシックプラン:5,000(円)×5,000(人)=MRR 2,500,000円
プレミアムプラン:10,000(円)×2,000(人)=MRR 2,000,000円

合計額の45,000,000円がMRRとなります。

※SaaSビジネスの収益構造の健全性を測る指標として活用されている「SaaS Quick Ratio」も、次のようにMRRを使って算出できます。

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計算式を見ればわかる通り、SaaS Quick Ratioは損失分のMRR(Downgrade MRR+Churn MRR)に対する増加分のMRR(New MRR+Expansion MRR)の比率をあらわす指標です。一般には、SaaS Quick Ratioの数値が「4」以上であればビジネスとして好調とされています。

MRRを改善する方法

以上、MRRの基本知識を紹介してきましたが、MRRを事業成功に結びつけるためには、4種類のMRRの変動を定期的に検証・分析した上で、改善策に取り組む必要があります。続いてその方法とポイントを解説します。

●New MRR改善策⇒新規顧客を獲得する

New MRRが少ない場合は、新規顧客獲得のための対策を講じることが必要です。ポイントは新規リード(見込み顧客獲得)数とコンバージョン(成約)率を向上させること。

そのためには次のような手法が考えられます。
・営業手法を変える、または増やす(例:対面営業⇒SFAツールの導入)
・既存の集客手法の精度を向上する(例:A/Bテストを実施する)
・ターゲットセグメントを変える、または絞る(例:一般企業⇒Web制作会社)
・広告の訴求や商品のポジショニングを変える(例:ポジティブ訴求⇒ネガティブ訴求)

●Expansion MRR改善策⇒アップセルまたはクロスセルを提案する

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図3

Expansion MRRの改善はCAC(Customer Acquisition Cost:顧客獲得費用)の回収期間短縮にもつながる重要な施策です。必要なのは、既存顧客に対するアップセルまたはクロスセルにつながる活動です。図3の通り、アップセルとは商品・サービスを上位グレードに乗り換えてもらうこと、クロスセルとは追加で別の商品・サービスを購入・契約してもらうことを指します。

両施策ともポイントとなるのは次の2点です。
・顧客にメリットや必要性を実感してもらう
・売り込みではなく「サポート」のための提案という意識

たとえば課題解決型商品のクロスセルなら、別商品を追加購入することで何がどのように改善されるのかといったことを、数字を使うなどして具体的にアピールすることが大切です。

●Downgrade MRR改善策⇒利用頻度を高める

Downgrade MRRが問題となる場合、「プロダクトの機能を充分に使いこなせていない」「サービスに満足していない」などの理由によって、顧客の商品・サービスに対する興味や愛着が低減している怖れがあります。

したがって、次のような積極的な取り組みが必要です。
・メールやTELでリマインドや利用促進をおこなう
・ユーザーサポートの拡充により、顧客満足度を高める
・UI/UXを見直すなど、商品・サービスの品質改善を図る

Downgrade MRRの上昇を放置しておくと、Churn MRR(解約MRR)の上昇につながります。そんな最悪の事態を防ぐためにも、常に「サブスクリプション型ビジネスにおいて商品・サービスは永遠のβ(ベータ)版」であることを忘れず、ユーザーサポートを含めて顧客体験のアップデートに取り組むことが大切です。

サブスクリプション型ビジネスにおいて商品・サービスは永遠のβ(ベータ)版

●Churn MRR改善策⇒解約防止策を実行する

Churn MRRを改善するためには、顧客の解約・退会、つまりチャーンレート(解約率)を抑えるための対策が必要です。Churn MRRが増えている場合、「サービスが顧客の問題解決につながっていない」「価格が競合に比べて高い」といった深刻な問題が発生している可能性があります。具体的な改善策はDowngrade MRR改善策とおおむね同じですが、事前に顧客にヒアリングするなどして、解約理由を明確化することが大切です。場合によっては、「カスタマーサクセス部門を設ける」「価格設定を見直す」といった抜本的な改善も必要になるでしょう

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以上、4つのMRR改善方法を紹介してきましたが、実際には紹介した取り組みをただ実施するだけでは不十分です。重要なのはスピーディーに取り組むこと。そして検証改善のサイクルを回すこと。たとえば、労務SaaSを提供して圧倒的な成長を続けている株式会社SmartHRでは、会社の価値観(Value)として「早いほうがかっこいい」という言葉を掲げています。

まとめ: MRR改善はサブスクリプション型ビジネス成功に欠かせない要素

MRRはサブスクリプション型ビジネスにおいて、事業の成長性を測る指標として活用されています。とはいえ、ただ測定しているだけでは意味がありません。New MRR、Expansion MRR、Downgrade MRR、Churn MRRの4種類のMRRを定期的に検証・分析し、改善策を実施することで、はじめて事業の成長につなげることができます。

忙しくて検証や改善策にまで手が回らないようであれば、『SIOS bilink』を導入するのも一手です。『SIOS bilink』とは、料金体系が複雑なサブスクリプション型ビジネスの課金計算や経理作業を自動化するシステムで、わずらわしいバックオフィス業務を脱属人化することで、コア業務に注力することができます。ぜひ一度、検討してみてください。